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ベトナム法人に対するIT開発費の支払い

2021.09.22

 

昨今ベトナムにソフトウェアなどの開発を委託する日本法人が増えているように思います。そこで今回は日本企業がベトナム法人にIT、ソフトウェア開発の業務委託をした場合の税務上の取り扱いについて検討してみました。

実務上はソフトウェア開発が人的役務の提供に該当する場合において、ソフトウェアの開発がベトナムで行われているときは、「PE(恒久的施設)なければ課税なし」の原則により、日本での課税関係は生じません。これに対し、ソフトウェア開発が著作権等の使用の許諾、または、著作権等の譲渡に該当する場合には、使用料等として源泉所得税の対象となります。

そこで、ソフトウェア開発に係る一連の取引の内容が、人的役務の提供に該当するのか、著作権等に該当するのかが重要になります。

 

実務上の判定に当たっては、以下のような流れで検討していきます。

 

①まず契約書を確認し、開発委託の内容や、成果物(知的財産権)の帰属先(日本 or ベトナム)について確認します。

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②次に取引の実態を確認し、契約書と取引の実態が一致しているか、契約書で謳われていない内容についての実務上の取り扱いを確認します。その際には以下のような点に留意します。

a)ソフトウェア開発の内容

b)日本とベトナムとの業務内容、業務分担(例えば、要件定義や開発の指示を日本で行い、ベトナムは日本の指示に基づいて開発作業のみを行うのか、あるいは、企画段階からベトナムに任せて、日本からは開発に関する指示を行わないのかなど)

c)成果物の知的財産権はどちらに帰属するか等

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③その上で、当該取引が単なる人的役務の提供に該当するのか、成果物(知的財産)が著作権法に規定する著作権等に該当するかを検討します。

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④委託業務が人的役務の提供に該当すれば、源泉なし、著作権法に規定する著作権等に該当すれば源泉所得税の対象となります。

●ソフトウェアの開発が著作権に該当し、その知的財産権がベトナムに帰属する場合には、著作権の使用の許諾を受けたこととなり、源泉所得税の対象となります。

●ソフトウェアの開発が著作権に該当し、その知的財産権が日本に帰属する場合には、ベトナムから著作権の譲渡を受けたものとして、源泉所得税の対象となります。

(注)日越租税条約では、租税条約の届出書の提出により、源泉所得税が10%に減免されます。

 

私見ではありますが、ベトナムでの開発がその過程において日本からの作業指示に基づき、単なる入力作業に終始するのであれば、人的役務の提供との主張できる余地があるのではないかと考えます。この場合、業務委託の対価が工数計算に基づいたものであっても上記判断には影響しないようです。(平成21.12.11 裁決事例集No.78)

このようにソフトウェアの開発が著作権法に規定する著作権等に該当するかどうかが重要となりますので、開発担当者の方によく話を伺い、場合によっては、著作権法に詳しい専門家の意見を徴することも有用かと考えます。