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国外転出時課税について ③ ~相続の場合~

2017.10.17

 

時価1億円以上の対象有価証券等をお持ちで、相続人になられる予定の方に非居住者の方がいらっしゃる場合にはご注意ください!

 

前回2回にわたりご案内した国外転出時課税制度ですが、相続があった場合にも、その対象有価証券等の譲渡があったものとみなして、同様に課税されます。

具体的には、国外に居住する相続人等が、次の要件に該当する被相続人(亡くなった方)から、対象有価証券等の一部又は全部を、相続等により取得した場合に、被相続人が相続開始時(亡くなった時)にその対象有価証券の譲渡があったものとみなして、その含み益に所得税が課税されます。

 

◎対象となる被相続人  ※国外転出(出国)や贈与の場合の対象者の要件と同じです。

次のいずれにも該当される被相続人が対象となります。

・対象有価証券等の価額の合計が1億円以上であること

・原則として、国外転出をする日前10年以内において、国内に5年を超えて住所又は居所を有していること

 

◎対象有価証券等とは? ※国外転出(出国)や贈与の場合の対象者の要件と同じです。

株式や投資信託等、匿名組合契約の出資持分、未決済の信用取引・発行日取引・未決済のデリバティブ取引

 

☆非居住者が相続した対象有価証券等が1億円以上であるかどうかではなく、相続時において被相続人が1億円以上の対象有価証券等を所有していた場合で、その一部、例えば3千万円分を非居住者である相続人が相続した場合もこの制度の対象となり、所得税が課税されることになるので注意です!

 

☆上記は被相続人側の方の課税の話ですが、相続人の方については別途相続税が課税されることになります(つまり、一つの有価証券について、被相続人側では所得税が課税され、相続人側では相続税が課税されてしまいます)。

 

☆準確定申告期限(相続の開始を知った日の翌日から4か月を経過した日の前日)までに遺産分割が確定していないときは、法定相続分で相続したものとみなされるため、相続人に非居住者の方がいる場合は要注意です!(その後に遺産分割が確定し、非居住者の方が相続しないこととなった場合には更正の請求が可能です。)

 

◎課税される金額  ※国外転出(出国)や贈与の場合と同様です。

対象有価証券等をその相続時に譲渡したものとみなして、その含み益について所得税が課税されます。

 

◎申告納税

相続人の方々が、その相続の開始を知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに、この制度によるみなし譲渡益を被相続人の所得金額に含めて、被相続人の準確定申告書を提出し、納税する必要があります。

 

◎対象有価証券等を相続等した非居住者全員が5年以内に帰国した場合

当該非居住者全員が、5年以内に帰国し、かつ、その対象有価証券等を引き続き所有していた場合は、上記のみなし譲渡はなかったものとして、課税が取り消されます。

 

5年以内に移転があった場合

5年以内に、その対象有価証券等が贈与により日本の居住者に移転した場合や、相続により対象有価証券等の所有者が全て日本の居住者になった場合は、当該対象有価証券等のみなし譲渡はなかったものとして、課税が取り消されます。

 

◎納税猶予制度やその後の課税の取り消しや減免措置等

国外転出(出国)や贈与の場合等と同様に、相続の場合も、納税猶予制度やその後の課税取り消し・減免措置の規定があります。

 

上記で記載した事項以外にも細かく規定されておりますので、実際の適用につきましては、顧問税理士の方にご相談、または弊所までお気軽にお問合せください。