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国外転出時課税について ② ~贈与の場合~

2017.10.02

前回ご案内した国外転出(出国)される場合の課税制度ですが、非居住者の方に対象有価証券等を贈与される場合も、贈与時にその対象有価証券等の譲渡があったものとみなして、同様に課税されます。

 

 贈与者と対象有価証券等の要件は以下の通りです。

 

 ◎贈与をする方  ※国外転出(出国)の場合の対象者の要件と同じです。

次のいずれにも該当される方が対象となります。

・対象有価証券等の価額の合計が1億円以上であること

・原則として、国外転出をする日前10年以内において、国内に5年を超えて住所又は居所を有していること

 

 ◎対象有価証券等とは?  ※国外転出(出国)の場合の対象者の要件と同じです。

株式や投資信託等、匿名組合契約の出資持分、未決済の信用取引・発行日取引・未決済のデリバティブ取引

 

☆非居住者に贈与した対象有価証券等が1億円以上であるかどうかではなく、贈与時において贈与者が1億円以上の対象有価証券等を所有していた場合で、その一部、例えば3千万円分を非居住者に贈与した場合もこの制度の対象となり、所得税が課税されることになるので注意です!

☆上記は贈与する側の方の課税の話ですが、贈与を受ける側の非居住者の方については贈与税が課税されることになります!

 

◎課税される金額

対象有価証券等をその贈与時に譲渡したものとみなして、その含み益について所得税が課税されます。

例えば、所有している上場株式の取得価額が5千万円、出国時にその時価が2億円となっていた場合で、そのうちの一部(取得価額2千万円、時価8千万円)を非居住者に贈与した場合、差額の6千万円について、15.315%の所得税(復興特別所得税含む)が課税されます。                        

 

◎申告納税

その贈与をした方は、翌年315日までの期間に、当該みなし譲渡による所得を含めて、その年分の確定申告の手続を行う必要があります。

 

◎贈与を受けた非居住者が5年以内に帰国した場合

当該非居住者が、5年以内に帰国し、かつ、その対象有価証券等を引き続き所有していた場合は、上記のみなし譲渡はなかったものとして、課税が取り消されます。

 

5年以内に移転があった場合

5年以内に、その対象有価証券等が贈与により日本の居住者に移転した場合や、相続により対象有価証券等の所有者が全て日本の居住者になった場合は、当該対象有価証券等のみなし譲渡はなかったものとして、課税が取り消されます。

 

◎納税猶予制度

原則5年、最長10年間の納税猶予制度があります!

納税猶予制度を受けるための要件

  1. その確定申告書に必要事項を記載及び一定の書類を添付

  2. 猶予を受ける税金及び利子税に相当する担保を提供

 

☆納税猶予期間中は、毎年315日までに所定の「継続適用届出書」を提出する必要があります。

 

☆納税猶予期間中に、贈与を受けた方がその対象有価証券等の一部を売却した場合はその売却した部分に対応する所得税を、その譲渡の日から4か月以内に納税しなくてはいけません。

→贈与を受けた方は、贈与者に、その売却の事実を知らせる必要があります。

 

☆納税猶予の適用を受け、さらに10年内の延長を受けた場合で、その猶予期間中に贈与を受けた方が帰国し、その対象有価証券を引き続き所有していた場合も、課税された税額は取り消しとなります。

→納税猶予の適用を受けない場合は、5年を過ぎて贈与を受けた方が帰国をしても、課税は取り消しとなりません。

 

☆納税猶予の適用を受け、その後、贈与を受けた非居住者がその対象有価証券を売却し、実際の譲渡益が少なかった場合には、所得税を再計算することができます(課税の減免)。

→納税猶予の適用を受けない場合、実際の譲渡益が少なかったとしても課税の減免を受けることができません。

 

☆納税猶予期間満了時に、対象有価証券等の時価が贈与時と比べ下回っていた場合、課税の減免を受けることができます。

 

 ※上記以外にも細かく規定されておりますので、実際の適用につきましては、顧問税理士の方にご相談、または弊所までお気軽にお問合せください。