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国外転出時課税について ① ~出国(国外転出)の場合~

2017.09.15

海外赴任・海外移住等で出国(国外転出)される方が、1億円以上の有価証券等を所有されている場合は、その含み益について課税されます!

 

◎対象となる方

次のいずれにも該当される方が対象となります。

  1. ・対象有価証券等の価額の合計が1億円以上であること
  2. ・原則として、国外転出をする日前10年以内において、国内に5年を超えて住所又は居所を有していること

 

☆日本に住所又は居所を有しなくなる人を対象としていますので、旅行や短期出張等で一時的に日本を離れるだけの方は対象外です。

☆就労・就学ビザ等の在留資格による外国人の方は、その期間は含めませんので、原則対象外となり、永住者や永住者の配偶者の在留資格による外国人の方は、20156月までの期間については含めないで判定します(つまり、5年後の20206月までは適用されないということになります)。

1億円以上の判定は、国内国外を問わず、保有する対象有価証券等の合計額で判定します。

 

◎対象有価証券等とは?

株式や投資信託等、匿名組合契約の出資持分、未決済の信用取引・発行日取引・未決済のデリバティブ取引

 ☆不動産や預貯金は対象資産ではありません!

 

◎課税される金額

対象有価証券等をその出国時に譲渡したものとみなして、その含み益について所得税が課税されます。

例えば、所有している上場株式の取得価額が5千万円、出国時にその時価が2億円となっていた場合、差額の15千万円について、15.315%の所得税(復興特別所得税含む)が課税されます。             

 

◎申告納税

1. 出国時までに納税管理人の届出をした場合

 →翌年の315日までに出国時の価額で譲渡があったものとみなして、申告納税

2.   出国時までに納税管理人の届出をしない場合

 →出国予定日から起算して3か月前の価額で譲渡があったものとみなして、出国日までに申告納税

 

5年以内に帰国した場合

5年以内に帰国し、かつ、その対象有価証券等を引き続き所有していた場合は、上記のみなし譲渡はなかったものとして、課税が取り消されます。

 

5年以内に移転があった場合

5年以内に、その対象有価証券等が贈与により日本の居住者に移転した場合や、相続により対象有価証券等の所有者が全て日本の居住者になった場合は、当該対象有価証券等のみなし譲渡はなかったものとして、課税が取り消されます。

 

◎納税猶予制度

原則5年、最長10年間の納税猶予制度があります!

(納税猶予制度を受けるための要件)

  1. ・国外転出(出国)時までに、納税管理人の届出を提出
  2. ・その年分の確定申告書に必要事項を記載
  3. ・猶予を受ける税金及び利子税に相当する担保を提供

 

☆納税猶予期間中は、毎年315日までに所定の「継続適用届出書」を提出する必要があります。

 ☆納税猶予の適用を受け、さらに10年内の延長を受けた方が、その猶予期間中に帰国し、その対象有価証券を引き続き所有していた場合も、課税された税額は取り消しとなります。

  →納税猶予の適用を受けない場合、5年を過ぎて帰国をしても、課税は取り消しとなりません。

☆納税猶予の適用を受け、その後その対象有価証券を売却し、実際の譲渡益が少なかった場合には、所得税を再計算することができます(課税の減免)。

  →納税猶予の適用を受けない場合、実際の譲渡益が少なかったとしても課税の減免を受けることができません。

 ☆納税猶予期間満了時に、対象有価証券等の時価が海外転出時と比べ下回っていた場合、課税の減免を受けることができます。

 

※ ご帰国の予定の有無、所有される有価証券等によって有利不利が変わりますので、実際の適用につきましては、顧問税理士の方にご相談、または弊所までお気軽にお問合せください。